館長室から

#72 弥生 平泉遺跡群の重要文化財再見⑦

2020.3.8

◆文字資料②続

▽墨書折敷②

*カタカナ墨書折敷
「人々給絹日記」と同じ井戸跡より出土し、30×23㎝の板を縦に用い、右から左へ12行にわたってカタカナが記されている。小岩弘明氏の読みを紹介します。なお、数字は右から数えた行の番号、( )内は可能性ある別字、□は解読不能の意味です。

「①タゝラ タゝ(ア・フ・ヘ・マ) タタチ(ウ) タゝル タタヰ
②タゝキ タゝミ サゝラ サゝコ サゝケ サゝユ
③サゝメ(ヤ) サゝメ(ヤ) サゝレ(エ) サゝキ クゝメ クゝリ
④クゝオ クゝシ クゝリ クゝツ クゝツ
⑤クゝク(タ) クゝミ(マ) スゝメ スゝリ スゝナ
⑥スゝカ スゝカ スゝシ スゝケ スゝキ キコハ
⑦マゝコ マゝキ □□□ カゝミ カゝト カゝ□ カ(マ)ゝシ
⑧□□□ □□□ □ゝク(マ・ミ) ツゝミ(マ) ツゝヰ ツゝラ ツゝリ
⑨コゝミ(マ・フ・ヘ・ア) キ(ヰ)ゝス □□ナ ハゝコ ハゝチ コゝメ コゝメ(ヤ)
⑩□□キ キゝヌ ヲゝナ ヲゝチ メゝキ ナゝキ シゝ□
⑪ワゝノ(ク) □ゝメ タゝミ □ゝヤ ヤゝケ ナゝヲ
⑫コゝ□ タゝコ スゝキ ヒゝキ コウ チ(ム)ゝレ □ゝク チ□□」

それらの意味を例出してみる。

①行目 タゝラ:蹈鞴 タゝ(ア・フ・ヘ・マ);徒・父・嘘(称)・讚・湛(策)・手玉 タゝチ(ウ):直路・直 タゝル:祟・閉・爛・駄々 タゝヰ:たたい・多大・直居・只居・徒居
②行目 タゝキ:叩・敲 タゝミ:畳 サゝラ:簓 サゝコ:笹子・鶯子 サゝケ:捧・大角豆 サゝユ:笹湯
③行目 サゝヤ(メ):笹屋・笹目 サゝレ(エ):細・刺・支・栄螺 サゝキ:大角豆・ミソサザエの古語 クゝメ:屈・哺 クゝリ:括・潜
④行目 クゝオ:? クゝシ:括 クゝツ:傀儡・裹
⑤行目 クゝタ(ク):? クゝミ(マ):包・句組・屈 スゝメ:勧・雀・進 スゝリ:啜・棺・硯 スゝナ:菘・方言の軒下
⑥行目 スゝカ:鈴鹿 スゝシ:生絹・涼 スゝケ:? スゝキ:薄・鱸
⑦行目 マゝコ:継子・飯事遊び マゝキ:真巻矢・真槇 カゝミ:鏡 カゝト:踵 カ(マ)ゝシ:案山子・喧・某・継
⑧行目 ツゝミ(マ):包・堤・皷 ツゝヰ:筒井・筒居 ツゝラ:葛・氷柱の方言 ツゝリ:綴
⑨行目 コゝマ(ミ・フ・ヘ・ア)小駒・屈・草蘇鉄 ヰ(キ)ゝス:射出 ハゝコ:母子・母御・婆御 ハゝイ:葉蜂 コゝメ(ヤ):醜女・粉米・小米・コゴメウツギ・小小屋
⑩行目 キゝヌ:生絹 ヲゝナ:女・媼・大名・大菜・魚の方言 ヲゝチ:大路・大死・大黄・大師・祖父・翁 マゝキ:? ナゝキ:?
⑪行目 ワゝク(ノ):枉惑・ぼろぼろになる ヤゝケ:? ナゝヲ:?
⑫行目 タゝコ:? ヒゝキ:響・皹 コウ:? チ(ム)ゝレ:縮

以上、同じ語から始まる特に意味を持たない言葉の羅列であり、しかも全てカタカナであることから、言葉遊びに関するメモかと思われる」と記している。

平安時代後期の特異な資料であり、今後の研究に期待しましょう。

平泉遺跡群出土の重要文化財再見
相原康二

相原康二(あいはらこうじ)

1943年旧満州国新京市生まれ、江刺郡(現奥州市江刺)で育つ。
1966年東北大学文学部国史学科(考古学専攻)卒業後、7年間高校教諭(岩手県立高田高校・盛岡一高) を務める。1973年から岩手県教育委員会事務局文化課で埋蔵文化財発掘調査・保護行政を担当。その後は岩手県立図書館奉仕課長、文化課文化財担当課長補佐、岩手県立博物館学芸部長を歴任し、この間に平泉町柳之御所遺跡の保存問題等を担当。2004年岩手県立図書館長で定年退職後、(財)岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センター所長を経て、2009年えさし郷土文化館館長に就任。

岩手県立大学総合政策学部非常勤講師(2009年〜)

岩手大学平泉文化研究センター客員教授(2012年〜)

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